フィクション

清水よう子
Oct 22, 2021

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2021/10/22

前触れなく、叩きつけるような雨が降ってきた。さっきまでお天気が良かったのに。

いつもなら雨が降っている時は湿っぽい土の匂いがしてくるけど、あまりに突然のことだったのでそれすら感じられない。おまけに夜になったばかりの暗い世界では、雨の姿を見ることもできなかった。

轟音のような雨音だけが聞こえる夜は、まるでフィクションであるかのようで少し奇妙な感じがする。

洗濯物を取り入れた後、少しの間、窓を開けて外を眺める。

じっと目を凝らして、見えない雨を見ていると、電灯に照らされた雨の筋がぼんやりと見えてきた。さっきまでカラッとしていた空気が湿り気を帯び、雨の日特有の土が混ざったような匂いも漂ってきた。

そうして、ようやく土砂降りの雨が降っていることを実感する。

これは物語ではなく、現実なんだって。

10月も後半になってくると、流石に外気にピリッとした冷たさが混ざるようになる。爪先がかじかむ前に雨の観察をやめて、ストーブに温まりに行こう。

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清水よう子
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Written by 清水よう子

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